クリナップ新キッチン ステディア〈STEDIA〉をプロが見た感想、評価、評判。
発売されてから数ヶ月が過ぎたがやっとクリナップが発売した話題のキッチン、ステディアを見てきたのでディープな感想、評価を簡単に述べたいと思います。
まずそもそも私は仕事関係で各メーカーのキッチンやユニットバス、トイレ等を販売していた過去があるのである程度詳しいです。オーダーキッチンの話も後述します。
そんな私が見たステディアの個人的な感想。
ステディアのコンセプト、発売された理由としましては
『デザイン性の向上』
これが一番の理由でしょうね。
アベノミクスのおかげかどうかは分かりませんが経済は良くなってきているのでしょう。一昔前は住宅設備業界ではとにかく安い商品が重宝されていました。
トイレで言えば来る日も来る日もピュアレストQRやアメージュZ、はてはジャニス工業のトイレも売ったものです。
現在のトレンドはデザイン重視です。
一昔前は安くて使い勝手重視でデザイン性は二の次でした。
経済の回復と共に余裕が出てきたのでしょう、デザイン性が高い商品が売れるようになりました。
そんなトレンドをいち早く掴んだ有名メーカーと言えばLIXIL、TOTOでしょうか。
そして番外的にサンワカンパニーのキッチン。デザイン性“だけ”は良いです。オールステンレスでデザイン性の高いキッチンがあるのでクリナップのシェアが奪われている。
個人のブログなんで偏見ありでハッキリ言いますが私ならサンワカンパニーのキッチンなは買いません。デザイン性だけで中国のよくわからんノーブランド商品使っていたりして見た目だけ、商品の“質”に対しては大きく疑問が残ります。金額も工務店だろうが施主だろうが一律同じなので工務店にメリットが全くない。つまり工務店が嫌がります。儲からない分他の所で利益を取るので結局かかるお金は同じか高くなるくらいに。メンテナンスの面から見ても後々大変だと思います。そこら辺を気にしてジャパニーズブランドも展開しているみたいですが。新築の場合は特に工務店との関係性は何より重要。そこら辺をふまえてサンワカンパニーを選ぶかどうか判断した方がよい。そしてメンテナンス等の後々のことも。どうも最近気になるのは見た目だけで判断しがちな人が多い。メーカーもそれにつられて見た目だけの商品を出し過ぎ。みんな後々の事を考えられないものか。これは日本人のダメなところ。以上、関係ない話。本筋に戻ります。
このメーカーの中級~高級価格帯キッチンであるクラッソ、アレスタ、リシェルはその高いデザイン性(あくまでも規格メーカーのレベルの中では)もあいまって人気が高いです。
まあ特にLIXILなんかはサッシやら床材やらトイレやらなんやら全てをLIXILにすることで安くさせるからという理由もある。
最近の新築がつまらない理由もそれだ。
新築物件がたつとほぼ必ずサッシはLIXIL。他の住設もLIXILにしているパターンが多い。
ああ、くそつまらん。
そのような事情で割を食うのは専業メーカー、つまるところクリナップやタカラスタンダードのような水回り専門メーカーだ。
だから俺は応援したい。このメーカー達を。
ただでさえLIXILやパナソニックのような多種多様な商品群を持つメーカーが全てを独り占めしていく訳なので売れなくなっていく。
金額の面ではそりゃ全て同じメーカーになれば安くなるし最近のトレンドでもあるデザイン性でも大きく水をあけられている。
クリナップのような専業メーカーがこの先、生き残るために必要なのは
『高くても客が気に入って買ってくれること』
これしかない。
なのでクリナップはクリンレディという何十年も続いたロングセラーモデルを亡くしてまで後継品としてステディアを販売したっていうこと。
ある意味クリンレディとステディアは相反するキッチンではある。
クリンレディと言えば独特な形状なフロアスライド収納、つまりけこみにあたる部分を収納として余すところ無く使うというのが有名でもあり業界の先駆者でもある。
しかしデザイン性を高めていくとなると独特なデザインのフロアスライド収納は文字通り足枷になる。
しかしあの独特なデザインが無くなればそれはもはや『クリンレディ』ではなくなる、なので新しいキッチンになるわけ。
そして実際のステディアを見た感想だが、まあ総合的に見て良い商品では無いでしょうか。デザイン的にも金額的にも程良く纏まっているとは思う。
しかしデザインに徹し切れていない所もあるわけで……
悪い所
古くさい天板の前垂れ、バックガード
これはTOTOのクラッソを見習って欲しかった所。
最近の天板はフルフラットが流行り、というか普通にカッコいい。
TOTOが採用している人工大理石メーカーの頂点にしてパイオニア、コーリアン。
こいつの厚みは10ミリ(商品によっては12ミリ)クラッソの良い所は前垂れとかで厚く見せずにコーリアンの10ミリの板をありのまま見せている。
薄い天板っていうのはスタイリッシュで大変カッコいい。
見慣れると40ミリ位ある普通のキッチンの前垂れのなんと不細工なことか。
スケールで寸法は測っていないがステディアはまだ前垂れの厚みを薄くしている方だと思うので一応気を使ってはいるようだ。
まあこれはクリナップという会社の性質上仕方ないのだ。
何故かというとクリナップはどちらかというと年輩の人、田舎の知名度が高いからである。
田舎であれば、年を取ればとるほど従来通りの物をありがたがる。
クラッソやリシェルのセラミック天板のフラット天板は年寄りや田舎もんには中々理解できないからだ。
それらを念頭においてステディアの従来より薄くなった天板を見れば感慨深い物が沸いてくる。
デザインと従来の伝統、二つの相反する物を両立させようとしたクリナップの新商品開発担当の苦悩が伺いしれる。
だが二兎追うものは一兎を得ず。結果的に中途半端な結果になってしまった。
悪い所 その2
けこみが機能していない
まあこれはある意味こじつけみたいなものだし他のメーカーにも言えること。
実際にけこみとしての機能を持たせようと思えば結構高く、結構深く作らないといけない。
しかしデザイン状、機能上(フロアスライド収納)の面から見てけこみとしての実用性のある形にするのは不可能なのであくまでけこみは見た目状だけのものになる。
これはクリンレディとしてもかかえる問題でもあった。(傾斜をつけてフロアスライドを押しこんではいる)
ではお待ちかね、ステディアの良い所
ワークトップにコーリアンを採用。
これは間違いなく良い判断。クリナップ自体はステンレスが得意なメーカーだと思われがちだが実は人工大理石も自社で生産(アクリストンシリーズ)出来ている技術力のある素晴らしいメーカーでもある。
知らない人たちの為に補足しておくが人工大理石やステンレスの天板やシンクは各メーカー全て自社生産しているわけではない。むしろ専門のメーカーから仕入れてさも自社生産のように宣伝しているだけである。
人工大理石は比較的自社生産している場合が多いがステンレスワークトップ、シンクを自社生産しているメーカーはほぼない。
そのことからもふまえてクリナップの技術力の高さが伺えることであろう。
そんなクリナップだがあえてコーリアンをわざわざ仕入れて仕様として入れてくるあたりに本気度が伺える。
やっぱりコーリアンは人工大理石ではトップ。その綺麗で優雅かつ豊富なバリエーションはどうあがいても勝てないのだから。
現状コーリアンを採用しているメーカーは増えてきている。
ぱっと思いつくだけでもTOTO、パナソニック、クリナップ、記憶が曖昧3センチだがLIXILも採用していた気がする。
これだけでデザイン性がはるかにあがった。
新開発の人工大理石製の流レールシンク
これは個人的に一番好きなところ。
はっきりいって使い勝手で言えばステンレスが最強なのである。衛生面でも熱に対する耐性でも割れに対する耐性でも。
ではなせ人工大理製の流レールシンクを開発したか。
それは人工大理石ワークトップの組み合わせのためである。
そのおかげでシンク、ワークトップ共に人工大理石でシームレス接着で見た目も綺麗にしあがる。
後は技術的な話になるが
人工大理石は加工しやすい商品ではあるが流レールシンクは特殊な形状をしているので作るのは難しかったはずだ。それをやってのけたクリナップ技術陣に多大なる賞賛を送りたい。(一度型を作ってしまえば後は大量生産出来るとはいえ)
しかし完全にステンレスの流レールシンクと同じというわけではない。
まあ私はある意味プロなので一発で気付いたが(さりげなく自慢)
シンクに至るまでに作られている溝の幅が太くなっている。
恐らく同じにするのは耐久性の面でも、作るのに絞り込むのが技術的にも難しいのだろう。
ハッキリ言わせて貰えば流レールシンクについている溝は絶対に人工大理石だと汚れが将来的に目立つと思う。
ステンレスは汚れが目立つということはない。しみこんだり色が着色することがないからだ。
そう言う面もあるがわざわざ人工大理石の流レールシンクを作ったクリナップは偉い、そう言う話だ。
白と黒の水洗金具
これも最近のトレンドを入れてきている。
質感はマット調で安っぽい感じはしない。
ちなみにKVK製の商品である。
クリナップは珍しくKVKの水洗金具を積極的に採用しているメーカーである。(タカラもKVKを採用している。)
パナソニックも搭載したいがKVKが卸してくれないらしい。
恐らくクリナップとの取り決めがあるのだろう。
パナソニックは苦肉の策として自社の有機ガラス系新素材とかいう大仰な言ってしまえばただの自社生産した人工大理石であるのだが(大仰な名前つけやがってナルシストメーカーである)わざわざそれを水洗金具メーカーに送りつけて人工大理石を使った水洗金具をわざわざ作らせているらしい。(ざまーみやがれ)
はっきりいって水洗金具に人工大理石を使う必要は全くない。無駄に高くなるだけである。
それはメーカーサイドも分かっているのでそこを付かれると苦笑いをしていた。
人工大理石でやる意味は全くないがKVKが卸してくれないのでしょうがないのだと。
まあ無知で騙されやすい消費者はどの時代にも少数はいるものなのでそいつらが買ってくれるであろう。
こんな感じか。最後に良い所としてあげるのではあればクリナップとしては最大の目的であろうデザイン性の向上であろう。
個人的な意見を述べれば確かにデザイン性は向上したがあくまでそれは今までのキッチンと比べてというだけでありライバルとしてシェアを奪い取りたいLIXILのアレスタ、リシェル、TOTOのクラッソらと比べてみると何とも言えないところである。
つまり尖ったところがないわけである。
しかし言い換えるとデザイン性も高く安定して纏まっているので丁度良い商品なのである。デザイン性だけにこだわった商品よりもキッチンとしての実力は本物なのだ、何故なら専業のクリナップが満を期して販売したのだから。
デザイン性も向上し、使い勝手も良く、金額的な面でも全体的に高く纏まっているステディアは
“優等生”
この言葉がしっくりくると思う。
ここまで長々と
“規格メーカー”の話をしたが最近の施主は目が肥えている。
つまりオーダーキッチンにも興味があるんじゃないの?
そんな人たちのためにすこし話そう。
一般的に高いと思われがちだがそれはある意味間違ったイメージ。無駄に高い機器類を搭載するから高くなるのだ。もちろん大手オーダーキッチンメーカーはブランドイメージがあるからやれガゲナウだのミーレだの付けたがる。
俺がおすすめしたいのはそんなオーダーキッチンメーカーではなくて
地元に根ざした地場のオーダーキッチンや造作家具を作っている会社だ。
オーダーキッチンだけで検索するから出てこないだけで○○県+オーダーキッチンで検索すれば出てくると思う。
あくまで断っておきたいが
“オーダーキッチン”というブランドだけが欲しいのであれば言い方は悪いが
トーヨーキッチンとか有名どころでやればいいだろう。
もちろん、トーヨーキッチンの悪口ではない
トーヨーキッチンにしか出来ない仕様なども勿論ある。(キッチンにそんなの必要かと言われると何とも言えないが)
それに最早トーヨーキッチンはオーダーキッチンと言うには余りにブランドイメージがつきすぎた。
オーダーキッチンというよりかはトーヨーキッチンという一つのブランドなのだ。
そうではなくて本当に自分だけのオリジナルを作りたいと思うのなら
有名どころのオーダーキッチンよりかは地元でオーダーキッチンなどをやっている会社が選択肢に入る。
例えば食洗機だけは絶対にドイツの食洗機を入れたい、後は適当でよいというのであれば
水洗金具やIH等を普及品で揃えればそこまで値が張ることがないであろう。
そう言う風にすれば金額もおのずと現実的な範囲になってくるわけだ。
金額と自分のやりたいことを順序付けておけばその金額の中で最大限の結果を生み出すだろう。
もちろん見た目だけを重要視してはダメだ。
マテリアル(素材)も大切だ。
キッチンに使われる材料や金物等の部材関係がちゃんとしたのを使っていないと意味がない。
見た目は良くても引き出しやキッチン自体のポテンシャルが低ければ意味がないかっらだ。
ホームページなどにどのような材料でキッチンを作っているかがわかるはずだ。
後は会社の社風等をチェックしてみて気になれば電話してみれば良いだろう。
高いと思って行動すら起こさないのが一番ダメなのだから。
オーダーキッチンも売ったことがあるから思ったことだ。
何百万もするなんてそんなことはありはしないのだから。(外国製の機器で固めたりとにかくゴージャスにすればいくだろうが)
ここまで適当に自分の感想を書いたがもし一人でも参考になる人がいれば幸いだ
恐らくこのブログに行き着く人は皆無だろうが